- 位置に基づく光無線通信の概要/Summary of Location-based optical wireless communications
空間に伝播する光は,直進性と壁面に対する非透過性という特質を持っているので,光を利用する通信方式は,電波による無線通信に比べ,セキュリティの確保という点で優れている。一方,ある物理空間での位置という個人が特定できない対象に対して情報サービスを提供するために,位置に基づく通信手段が必要である。
図は位置に基づく室内空間光通信システムの基本構成例である。数台の携帯通信端末による情報環境から得られたデータを天井に配置されたレーザレーダにアップロードし,レーザレーダは複数の端末の位置を検出し,その中の1つの端末に注目して,追跡するとともに空間光通信によりデータ伝送を行う。通信距離はレーザレーダの真下の点から半径数メートル程度までの範囲である。
位置に基づく光無線通信の装置/Location-based optical wireless communications system
図1は再帰光反射シートと位置検出カメラを用いた位置に基づく情報通信方法である。端末装置には,再帰光反射シートが装着され,環境装置から照射した赤外ビームを環境装置自身の方向へ反射するようになっている。また,カメラの開口に赤外フィルタを取付けたので,ユーザ情報を載せている信号のみが環境装置に受信される。情報処理側には,画像取込ボードをカメラとコンピューターに接続し,端末位置取得の同時に,端末から発信した反射率変調信号を認識する。
図2は空間光位相変調器(PAL-SLM)による多元個別情報提供方法である。複数利用者のそれぞれの要求する情報を,その位置による同時に提供するために,端末群に対して,特定の複数対象端末に偏向した空間光を照射する必要がある。そこで,カメラで端末の位置を測定し,得られた位置情報に対応する可変CGHをPAL-SLMに書込み,光の回折現象による空間で光多重配線を行う。このことにより,1対多の多元個別情報通信を実現することが可能になる。
端末の位置検出/Terminal location detection
左図は端末位置検出のプログラムの実行例である。端末装置には,再帰光反射シートを装着しているので,光が照射されると,端末に載せた信号光がカメラの方向へ高い輝度で反射する。したがって,容易に雑音から端末を分けて取り出し位置を検知する。また,カメラには光源の波長帯に適合したフィルタを装着してあるので,環境照度の影響を除くことができる。
カメラと端末との距離が短い場合,パターンマッチングアルゴリズムとバンドパスフィルタにより端末の形状と輝度の二次元情報を利用して取得する。カメラと端末との距離が長い,すなわち,形状の識別が困難な場合,プログラムにより,カメラ視野内での目標ごとに輝度値を測定する。右図は近(上)/遠(下)距離に端末位置の取得結果である。
- 端末の情報認識/Terminal information recognition
端末画面の空間光反射率がユーザ想定の情報コードに変調される。カメラはユーザ情報を載せた明滅変化の画面を連続的に撮影するとともに,時系列的な光強度変化の画像信号を画像取込ボードに書き込み,コンピューター処理可能のデータ変換を行う。最後に,プログラムでコードを解釈することによって,ユーザ興味に合せた情報コンテンツがディスプレイに表示される。